今回は、集英社文庫の短編集『少年』について、感想を綴ります。
はじめに
「少年」は、伊坂幸太郎、朝井リョウなどの豪華な面々による短編集です。主人公は小学生から大学生までの「少年」です。思春期の想いがリアルに描かれている小説です。
印象深い物語~「逆ソクラテス」~
最初の「逆ソクラテス」は、共感できるところばかりでした。「教師期待論」は誰もが感じてた事なんだなぁと感じました。小学生の時に感じた違和感が腑に落ちました。別に教師批判をしたいわけではないですけど、行き場のなかった気持ちを思い出しました。
教師が生徒に対して、○○と印象付けたら、その様に生徒はなるって理論です。恐ろしいことに安斎はこの理論を理解していた。小学生で理解できるってすごいですよね。精神的に大人ですよね。結果的には、安斎はどんな大人になったか明記されていないですが、半グレって暗に示されています。少し残酷ですが、現にありそうですよね。ほんと、恐ろしい理論です。
何も言えなくなりますよね。虚しいですよね。子供は教師や大人が何を期待しているか、本音がどこにあるのか敏感です。幼少期のこういう気持ちっていつまでも残っていたりするものです。些細な事でもです。久留米先生みたいな人が一番嫌ですよね。(苦笑)
伊坂作品と言ったら、サスペンス・群像劇ってイメージでしたが、短編になると違いますね。伊坂作品への印象が変わりました。もっと違った短編も読んでみたいものです。
印象深い物語~「ひからない蛍」~
印象に残っている物語として、もう一つあります。朝井リョウ先生の「ひからない蛍」です。児童養護施設の少年少女たちの物語です。内容は、正直ぴんとこなかったです。自分には無縁の話ってこともあって、内容というよりも、やっぱり朝井リョウ先生の心情描写について感じたことを書きます。
相変わらず、スクールカーストを描写するのが上手いと思いました。このブログで毎回言ってる気がしますが、事実なので仕方ないです。長谷川は上位で、施設の面々は下位で…。長谷川などのスクールカースト上位を嫌な感じで描写するのが上手いです。毎回、上から目線でごめんなさい(笑)
また、太輔の孤独な感じも感情移入してしまいました。境遇が一緒だと思っていた人には、近しい人がいたりと悲しい現実ですね。最後は前向きな感じで終わりましたがね。まぁ、とにかく、夢中で読める物語でした。
印象深い物語~「跳ぶ少年」~
「跳ぶ少年」は驚く描写が多いです。村上春樹作品かと思いました(笑)
石田衣良作品を初めて読んだこともあって、印象深い物語でした。
見られることは支配されることだった。
翔太の心理をもっとも描いているところです。部活を辞めて夢中になるものがない翔太が、興奮する場面です。成長というよりも何かに納得したのでした。物語の最後、仕事を手伝いたいと言います。翔太が夢中になれるものを見つけ、自分を納得させたところで物語が終わります。
十代で、自分を納得させて、夢中になれるものを見つけた翔太は、結局のところ、成長しています。TAMAKIさんとの出会いが、翔太の人生に大きな影響を与えるだろうことが暗示されているのでしょう。
蛇足的な感想
この短編集は、シリーズになっています。他にも「復活」「工場」「少女」とあります。それぞれのテーマで物語が展開されているので、チェックしてみようと思います。