三流大学、理系学生が読んだ書物を語る

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感動と何か~この世界にiをこめて~

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 今回は、『この世界にiをこめて』について、感想を綴ります。(注意:ネタバレあり)

 

はじめに

  著者は、佐野徹夜さんです。「君は月夜に光り輝く」、「アオハル・ポイント」で有名な方です。

 

君は月夜に光り輝く』で第23回電撃小説大賞《大賞》受賞、デビュー。晴れて専業小説家になった今の悩みは「趣味は読書」と言えなくなったこと。ペンネームの由来は、よく徹夜していることから。
出典:第2回 佐野徹夜 | メディアワークス文庫公式サイト

 

あらすじ

 生きづらさを抱え、退屈な高校生活を送る僕に、ある日届いた1通のメール。
【現実に期待なんかしてるから駄目なんだよ】
 でも、それは届くはずのないメール。送り主は吉野紫苑。彼女は、屈折した僕の唯一の女友達で、半年前に死んでしまった天才作家だった。
 あり得ないはずのメールのやりとりから、僕は失った時間を取り戻していく。やがて、遺された吉野の最後の言葉に辿り着いた時、そこには衝撃の結末が待っていた――。
 出典:この世界にiをこめて | メディアワークス文庫公式サイト

 

感動系ラノベ

 人生に悩んでいる小説家やその周囲の人の物語です。前作の『君は月夜に光り輝く』に続く、感動的な内容になっています。小説の帯には「感動が再びーー!」とあって、感動系ライトノベルかと思い購入しました。我ながら、単純な動機に呆れてしまいます。(苦笑)

 

 率直な感想として、読み終えて、感動しませんでした。

 

 いや、勘違いしてほしくないのは、感動はしなかったということで詰まらなかったということではないです。この物語は、読む人によって全然印象が変わると思います。感動というよりも考えさせられる物語だと感じました。

 

 近しい人が死んで、その現実から虚無感に支配されながら生活を過ごしていく染井は、過去志向の人、その目の前に現れた過去志向の真白。

 

虚数i」の意味

 思い出してほしいのが虚数です。

 

 過去志向=虚数

 

 一般的に虚数は、「掛けると打ち消し合う」

 

 だから、染井と真白で過去志向を打ち消し合い、最後は現実志向になった。取り敢えず、言えること、過去志向と過去志向は掛けると現実志向になるということです。私が言いたいのは、決して未来志向にはならないということです。

 

 ですから、この染井と真白は結局のところ、次は現実志向の段階で悩み苦しむ未来があるということです。別に、『悩むこと』という意味では、未来志向も変わらないですが(笑)

 

 同じ時間を過ごすにしても未来のことで悩むのと現実のことで悩むのと過去のことで悩むのでは、色々と価値が違うということ。過去は、悔いたって戻れないしやり直しも効かない。現実は、目の前に迫っている・今しかできないことに対してしか効かないこと。未来は、未来に起こりうる全ての事象に基づいて行動して、対処すること。

 

 生きることがキツいなんて今の視点で見ている世界でしかない、未来からの視点で『今』を見たら結局は時間や環境が解決しているように見えなくもない、ってこと。

 

好きな場面

 

 「心からずっと、血が流れているみたいにひりひりするんだ」

 

 言葉のチョイスが好きです。悲痛な気持ちが伝わってきて、ただ痛いだけじゃない感じが読んでいて、印象深いです。

 

蛇足的な感想

 感動はしなかったですけど、面白い物語です。スラスラと読める物語でした。佐野徹夜の別作品、『君は月夜に光り輝く』も感動系ライトノベルなので、前作を読んでからこちらを手に取るのが良いと思います。作風の好き嫌いが、ハッキリとする作家だと思います。

 

 是非、皆さんも手に取ってみて下さい。

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