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突然の目覚め~美しい星~

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 今回は、『美しい星』について、感想を綴ります。

 

はじめに

 著者は、三島由紀夫です。「仮面の告白」「金閣寺」で有名な方です。

 

三島 由紀夫は、日本の小説家・劇作家・随筆家・評論家・政治活動家・皇国主義者。血液型はA型。戦後の日本文学界を代表する作家の一人であると同時に、ノーベル文学賞候補になるなど、日本語の枠を超え、海外においても広く認められた作家である。
出典:三島由紀夫 - Wikipedia

 

あらすじ

 大杉重一郎は地球とは別の天体から飛来した宇宙人であるという意識に目覚ます。それから程なくして、次々と一家は宇宙人であると自覚します。一家は地球の救済に向けて、政治、宗教、思想を説き始めるのでした。

 

突然の目覚め

 突然、家族の誰かが『私は宇宙人だ』と言い出したら驚くものです。しかもそれが家族全員が違う星の生まれだという。最初はそんな馬鹿げたことと真に受けないはず。次の日には、兄弟が『私は宇宙人だった』といい、はたまた次の日には自分が『私は宇宙人だ』と自覚する。そして、最終的には、『我々は違う星の生まれの家族だが、地球を救う使命がある』と思い込み、生活の基準が地球救済だけになっていきます。

 

 最初、三島由紀夫がこんなSFちっくなものを書いているとは、思いもよらなかったです。SFなんだけども思想小説的なところがあります。宇宙人の自我に目覚めた家族の生き方と悟ることで地球の日常を客観視している毎日。

 

 選民思想の愚かさと現代社会に対する批判が書かれている気がしました。この小説の面白いところは、最終的には個人的な問題が大きく自分の生活を支配していくことです。

 

大杉家を理解する

 地球の救済どころか、個人レベルの問題に振り回されている大杉一家の面々。精神は宇宙人どころか普通の人と変わらないところが面白い。父親の重一郎は病気のこと、娘の暁子は妊娠、一雄は親しくしていた人からの裏切り、母親の伊余子は重一郎の病気を家族の最後に知ったことの劣等感に近い敗北感。一体、大杉家の面々は、何をしたかったのでしょうか。それぐらい、最後は迷走している様に感じます。

 

 結局のところ、人は些末なことに心が揺さぶられて、後から振り返ると人生に大きく影響していたりします。精神的に大人びている大杉一家はきっとその崇高な精神(自分は宇宙人という自覚)を持ってるから…。きっと人生を楽しめていないことでしょう。

 

お気に入りの場面

 

かつてあれほど人間の心を高鳴らせた悪の快楽や苦悩は、埋み火のように、いぶって、内政して、現代社会の組織を巨大な欲求不満の体系に変えてしまった。

 オブラートに包むことなく、鋭い社会批判がされています。三島由紀夫の主張が読み取れます。ただ忘れてはならないのは、このような社会を作ったのも人間であることです。そして、この批判をしているのも人間であることです。矛盾しているようでしていない感じが伝わってきて、印象深い場面です。

 

蛇足的な感想

 この現代に自称「宇宙人」の一家がもしいたら、youtuberとしてデビューしたらバカ受けしそうな気がします。それぐらい、「可笑しい」というか何というかって感じです。まぁ、本人たちは本気なんですけどね。

 

 私は、『自分は宇宙人だ』という選民思想の怖さを説いている物語だと解釈しています。誰にでも『自分は○○』という考え方はあります。それが悪い方向に行った時の残酷さと人の弱さを啓蒙している物語だと思います。

 

 是非、皆さんも手にお取り下さい。

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