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【感想】小説「何者」

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 今回は、小説『何者』について、感想を綴ります。

 

はじめに

 著者は、朝井リョウさんです。「チア男子!!」「桐島、部活やめるってよ」などで有名な方です。

 

朝井 リョウは、日本の小説家。岐阜県垂井町出身。岐阜県立大垣北高等学校、早稲田大学文化構想学部卒業。2009年、『桐島、部活やめるってよ』で第22回小説すばる新人賞を受賞しデビューし、2012年には同作が映画化。
出典:朝井リョウ - Wikipedia

 

小説と映画

 主演が佐藤健さんで映画化されています。映画「何者」は、舞台演出のような描写が多いです。物語の終盤、拓人が舞台袖から走り出すところは、拓人の心情そのものを表しており、自分と向き合うことに迫られた状況を表しているように感じました。

 

 小説と映画は物語として、大きな違いはありません。小説では、拓人の心情が丁寧に読み取れます。瑞月に対しての想い、光太郎に対しての嫉妬、ギンジに対する嫌悪…、など多くの感情が表現されており、読んでいると引き込まれました。

 

二宮拓人と何者

 いきなりネタバレになってしまいますが、二宮拓人はこの物語の軸です。就活浪人として、2度目の就活をしています。就活浪人していることは、物語の後半ではっきりと明記されます。最初読んだら、1番驚く設定です。

 

 ただ、この事実を知った上で読むと、拓人が就活浪人しているだろうと読み取れる箇所は、物語の冒頭から散りばめられているような気がします。サワ先輩や光太郎との会話をよく読むと違和感があったりしなかったりします。

 

 例えば、サワ先輩の家でESを書いている場面です。

 

「そんなの、お前、今更やる必要ないんじゃねえの?」

 拓人の設定を知らずに読むと、拓人が就活を光太郎、瑞月などよりも就活を早く始めた意識高い系であり、既にESを練っているが真面目にもう一度書き直しているのだろうと思います。しかし、拓人が就活浪人だと知った上で読むと、サワ先輩の言葉は違った意味に聞こえてきます。

 

 去年に「自分の軸」を見つけてるんじゃないの?、とちょっと辛辣な意味になるのかなと感じました。これは邪推ですが。

 

 ここで、二宮拓人とは一体、何者なのだろうか?と感じました。

 

 就職浪人していて過去に演劇サークルに所属していた、現在、就活を頑張っている若者、と簡単に説明はできますが、本質ではないですよね。分析力に長けているも、自己分析ができない就活浪人生だと付け加えるとしっくりときます。

 

 就活をダウトに例えた場面より、

 

それなりに強いカードを持つふたりに、そのカードがそれほどでもないことを思い知らせてやりたいと思ったのかもしれない。

 就活をダウトに例えて、就活は自分を良く見せる技が求められると拓人は言います。それをふたりの前で言った場面です。強いカードを持つふたりに嫉妬したから言ったのだろうに、思ったのかもしれないと、表現されています。ここを強いカードを持つふたりに嫉妬したからだ。と拓人は言えません。

 

 ここ以外にも、拓人は自分の思いに対して、~かもしれないなどの曖昧な感情表現が多いです。自分を客観的に見れていないなのだろうと感じる場面が多いです。拓人は、人の分析はできるけど、自分を分析できないイタイ奴だと言えるかもしれません。だから、拓人は何者にもなれないのかもしれません。

 

お気に入りの場面

 隆良が瑞月のESを読んだ場面より

 

「だって、留学とかインターンなんて、いまさらそんなに珍しくないでしょ。だったら、それをどう伝えるのか、もっと考えたほうがいいと俺は思う」

 伝え方は大事だよな、と共感しました(笑)
 隆良の言うどう伝えるかのか、は就活では必須の力だと言えます。これを友達にすんなりと言えてしまうのはカッコいい。

 

 帰りのタクシーで光太郎が放った言葉

 

「俺さ、就活って内定出たら終わりって思ってたけど、ちげえわ」
メーターの料金がまた上がる。
「俺、今日会った同期と、今日行った会社で、ずっとずっと働くんだよな」
光太郎はもう、返事を求めていないように見えた。
「就活は終わったけど、俺、何にもなれた気がしねえ」

 これは、耳が痛いです。光太郎の「何にもなれた気がしねえ」って、誰しも共感しますよね。少なくとも私は感じるものがあります。

 

 就活を行うまでは、大学受験などの正解のあるものを追い求めていた。それが急に正解のない、自分で答えで行動することが求められます。光太郎はこれに違和感を持っているのです。ここに共感しました。

 

二宮拓人と就活

 拓人は就活を通して、自分と向き合うことになります。ギンジは自分の好きなことで生きていくことを決意した。対して、拓人はそんなことはできないと冷めた目で分析して遠ざかる。そんな拓人が物語の終盤で成長します。

 

だけど、落ちても、たぶん、大丈夫だ。不思議と、そう思えた。

 就活を通して、この気持ちになれたらすごいですよね。きっと、何者かになるために進み出したのだろうと思います。

 

蛇足的な感想

 ひねくれものの拓人は、読んでいていたたまれないです。一番冷静で観察力があるのに、自己分析は全く出来ていない。誰か教えてあげなよって言いたくなります(苦笑)。

 

 友達の光太郎と一緒にWEB試験受けたり、愉快な仲間たちと就活会議したり、一見どこにでもいる学生ですが、拓人が深い闇を抱えていて、人は見かけによらないなぁと思います。

 

 人それぞれ、躓くところは違い、そんなところで躓く?って他人から思われたり、逆に、自分が思ったりするもの。ただ、そこで人柄が出る、ネチネチ影口を言う人や非難する人、相談に乗ってくれる人や自分から相談に乗って出る人、結局、『自分から』誰かのために行動する人が大企業から内定を貰っていたりするのだろうと思います。

 

 是非、皆さんも手にお取り下さい。

 

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