今回は、『神田川デイズ』について、感想を綴ります。
はじめに
著者は、豊島ミホさんです。「檸檬のころ」などで有名な方です。
豊島 ミホは、日本の小説家、ライター。秋田県湯沢市出身。秋田県立横手高等学校・早稲田大学第二文学部卒。
出典:豊島ミホ - Wikipedia
あらすじ
世界は自分のために回ってるんじゃない、ことが、じんわりと身に滲みてきた大学時代……それでも、あたしたちは生きてゆく。凹み、泣き、ときに笑い、うっかり恋したりしながら。
出典:「BOOK」データベースより
地球のすねかじり達から物語は始まる
内容としては、大学生のお話です。ぱっとしないトリオやある団体に属してる学生、大学デビューの学生など、まぁ、数人の学生の視点で書かれている、短編連作です。
この本が出たころは、きっと「陽キャラ」「陰キャラ」などのハッキリとした言葉の住み分けなかったのでしょう。この物語は、ストーリーを通して、「陽キャラ」「陰キャラ」のそれぞれが抱えている問題、心情を描いています。言いたいことは、「スクールカースト」が上手く描かれているということです。
スクールカーストと言えば、朝井リョウの「桐島、部活やめるってよ」などですが、それとは別に豊島ミホの作品もスクールカースト視点で読むと面白いです。
お気に入りの場面
気になるところ2つを本文から上げます。
俺たちって地球のスネカジリだと思わないか。こんな…こたつと石油ストーブのw使いの部屋でぬくぬくして、ミカンまで消費して……」
物語の冒頭がこんな会話から始まります。とても印象的です。体たらくな学生生活を過ごしているトリオは、このままでは人生が詰まらないから何かしようと言い出すのです。しかも、テスト期間中に(笑)
よりによって、お笑いライブをゲリラ的に行うってことで帰結するのですが、まぁ、面白いです。大学内でお笑いライブをゲリラで行うだけの行動力があったら、きっと彼らの童貞卒業は近いのでしょう。
実行する姿勢が馬鹿馬鹿しいが面白いです。
ただ、俺は、どこか他のところに行きたいのだ。パッと開けた、めくるめく世界がーーあの雨の音と、後悔と、羞恥を、さっと消してくれる光に満ちた世界がーーちゃんと先に行っていると信じたいだけだ。
話は変わり、ある男子大学生が現状を変えたいと思い、最後の決意する場面です。大学生の時って、意外と(どこだか分からないけど)自分自身が進んでいないと自覚する人が多いと思います。
そのリアルな心情に共感して、この場面がお気に入りになりました。どこか不甲斐なさがある感じが、とてつもなく心痛いです。
蛇足的な感想
本文には、これら以外にも現状を打破したい思いがリアルに描写されていると感じました。著者自身があとがきで書かれているのですが、登場人物に著者自身を反映させている部分があるのがなんとなく読んでいて感じました。だから、読んでいて共感することが多かったです。
特に、友達を作れなかった理由として
「選ばれたいが、私は選ばれない」という強い思いがあったからだ。
自分も友達が多い方ではないので、この気持ちが無きにしも非ずって思います。
また、
でも、「選ばれないから」と怯えて後ずさることで、自分が「誰をも選ばれない」という選択をひとつしているということに、私はずっと気が付かなかった。
これは、響きましたね。誰からも選ばれないからって誰も選ばないことは、別問題であるのは当然ですよね。当たり前のことに気がつきました。
是非、皆さんも手に取ってみて下さい。