森ワールドを堪能~銀河不動産の超越~

 『すべてがFになる』の著者、森博嗣のラブコメ⁉作品。

 無気力すぎる髙橋と愉快な仲間たちとの物語。特に事件が起こることはないが、会社で出会うお客さんはどの人も個性が強い者ばかり。

 自然と髙橋の周りには変わり者が集まり、離れていったと思うと、また集まっていたりする。「幸せを築こうとする努力」の果てにある結果には少しほっこりとする。

 

 人とのつながりが自分を成長させているそんなことを感じた。自分が思っているよりも人との関わりが大きく人生に作用している。とりとめのない出来事を通して出会う人こそ、将来ずーと長く付きあう気がする。狙って出会った人とはその時だけの付き合いで終わってしまう。それはそれで良いのかもしれないが、せっかくだったら長く付き合い、人とは何ぞや的な哲学的意味を理解するのも良いと思う……

 

 

好きor嫌い~天上の音楽~

 『天上の音楽』を読み終えて、思ったことは、これが映画になったら面白そうだということ。 別に天音役が橋本愛じゃなくても実写化希望です。

 音楽一家の家族再生物語、結局は、家族は大事だよねって物語。

 主人公以外はみんな音楽に生き、音楽中心に生活が成りたっている。自分だけがのほほんと消費していく毎日。

 片や天音は、睡眠、食事を削ってピアノを弾く毎日。

 姉弟でこんなに対称的だと、読んでいていたたまれない。

 一番印象的な場面は、天音が母親の葬式に行かなかったときの心情を吐露するところだ。

「でも行かなかった。意味がないと思ったから」

 形式だけ哀しんでみせるなんてことできないから

「だから発表会に出たの。そうしたら、周りの人たちからは病気だって言われた。変だって」

  まさしく、天才って感じの天音。ピアノを究める覚悟にハッとさせられた。小説だしフィクションだけども、この覚悟はすごい。

 音楽が題材のものは、感動が切っても切り離せないぐらいセットになっているように感じるが、この物語はそんなことなかった。

 父と天音との距離がぎこちない、だけれども、ドロドロ(死にたくなる程)とし過ぎていない。重すぎない物語として素直に楽しめた。

 

 

天上の音楽 (メディアワークス文庫)

天上の音楽 (メディアワークス文庫)

 

 

突然の目覚め~美しい星~

 突然、家族の誰かが『私は宇宙人だ』と言い出したら驚くことだろう。しかもそれが家族全員が違う星の生まれだという。最初はそんな馬鹿げたことと真に受けないはずだ。

 だけど、次の日には、兄弟が『私は宇宙人だった』といい、はたまた次の日には自分が『私は宇宙人だ』と自覚する。そして、最終的には、『我々は違う星の生まれの家族だが、地球を救う使命がある』と思い込み、生活の基準が地球救済だけになっていく。

 最初、三島由紀夫がこんなSFちっくなものを書いているとは、思いもよらなかった。SFなんだけども思想小説的なところもある。宇宙人の自我に目覚めた家族の生き方と悟ることで地球の日常を客観視している毎日。

 選民思想の愚かさと現代社会に対する批判が書かれている。この小説の面白いところは、最終的には個人的な問題が大きく自分の生活を支配していくことだ。父親の重一郎は病気のこと、娘の暁子は妊娠、一雄は親しくしていた人からの裏切り、母親の伊余子は重一郎の病気を家族の最後に知ったことの劣等感に近い敗北感。

 地球の救済どころか、個人レベルの問題に振り回されている大杉一家の面々。

 精神は、宇宙人どころか普通の人と変わらないところが面白い。

 

 結局のところ、人は些末なことに心が揺さぶられて、後から振り返ると人生に大きく影響していたりする。精神的に大人びている大杉一家はきっとその崇高な精神(自分は宇宙人という自覚)を持ってるから……

 きっと人生を楽しめていないことだろう。

 

 映画観に行きたいな~(笑)

美しい星 (新潮文庫)

美しい星 (新潮文庫)

 

 

これぞSFラブコメ~世界、それはすべて君のせい~

 ある日、大学の映画サークルで活動する貴希は、語学のクラスで一緒のお嬢様・村瀬真葉と言い合いになる。真葉の高飛車な態度が原因だった。教授の仲裁もあり、その場で収まる。

 それから数日後に真葉は、何事もなかったかのように貴希のもとに「サークルに参加させてほしい」と来る。どの面下げて来たんだよと、貴希は思う。しかし友人たちは、噂とかけ離れた真葉の優しい態度と才能溢れる自作の脚本もあって、歓迎的。

 結局、貴希が折れて、真葉を迎えいれて、真葉の脚本で映画を制作し始める。貴希は、撮影を追うごとに真葉の優しい態度に惚れていく。そして、告白する。しかし、物語はそんなうまくは出来ていなくて振られる。真葉が振ったのには理由があった。

 「私、実は平行世界から来ているんだ」みたいな感じで(笑)

 普通の人だったら、何をこの人はおっしゃっているのだろうか?とクエスチョンマークが数個は頭に浮かぶことだろう。衝撃の事実を告げられるも頭が理解する前に真葉は「もう滞在時間がないんです!」と自分の世界へと帰る。

 それから貴希は何度も頭の中で咀嚼して事実を受け入れたことだろう。大学を中退して理学系学部に入り直す。並行世界について研究し、もう一度真葉に会うんだ!!と物語は終幕。

 真葉の物語=映画の脚本

 なんともシンプルだけれども、それが良い。何よりも結末が良い、真葉は自分の世界に帰り、貴希と真葉は結ばれなかったところだ。

 

 何よりも、真葉の別れの手紙

 ねえ、一緒に見たストロベリームーンを覚えている?わたしもあなたも、きっと幸せになるんだよ。夏目漱石の言葉。”僕は死ぬまで進歩するつもりでいる。”これをわたしは実践して生きていくつもり。

 

 この言葉できっと、貴希は法学部を辞めて、理学系学部に入ることを決断したことだろう。

 

世界、それはすべて君のせい (集英社オレンジ文庫)

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さぁ本気を出すときだ~俺はまだ本気出してないだけ~

 40歳にして漫画家を目指すべく突然会社を辞めてしまうシズオの潔さが何とも痛快だ。可愛い橋本愛娘がいるのに会社を辞めてしまう。それでも夢をあきらめない生き方がカッコイイと思う。ふと立ち寄った大人の店で娘と鉢合わせるところは不覚にも笑ってしまった。

 努力もするが、小学校時代からの幼なじみと飲みもする。ぐーたら生活を過ごしているようでしっかりしているシズオ。だから、憎めない。たとえ可愛い娘からお金を借りようとも、朝からゲームをやっていようともだ。

 漫画家を目指すというと『バクマン。』を思い出す。寝ないで描いて、描いての日々。なのにシズオからはそんな感じがしない。でも内心はめちゃくちゃ脳内会議をしていて焦りもある。だからといって、焦りだけでもなくて周りの人たちよりも自由にどこか余裕のある感じがある。単なるアホだともいえるが、そこが良い。

 決して真似をしたいわけではないが、ちょっとかっこいいと思えてしまう。シズオの無邪気さを羨ましく、見習いたと心から思う。

 

俺はまだ本気出してないだけ コミック 全5巻完結セット (IKKI COMIX)

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何を考えているんだ?~渇き。~

 ドラックに暴力、どうしたらこんな世界に首を突っ込めるのだろうか。しかも、高校生でだ。加奈子という人物像が優等生以外に掴めない。それぐらい目まぐるしく物語が進行する。

 父と娘の関係がドロドロしていて、気持ち悪かった。最後の最後まで『暴力』が付きまとう物語。後味の悪さが何とも言えない……

 

 しかし、そんな悪い感じばかりではなく、橋本愛可愛さ表情がとても良い感じだったりと面白く見れたりもした。昭和が長野の薬づけだということを気づいたときの、森下のかばうところが一番印象的だった。

 

渇き。

渇き。

 

 

古都と言えば京美人~古都~

 京都は特別な雰囲気をまとったところ。いつ行っても市内は落ち着いていて、ほど良い都会度だ。きっと、昔も変わらない雰囲気で今の京都を築いてきたのだろう。華やかさと風情を兼ね備えた京都を、祇園祭の際にはひときわ感じることができるだろうことは、描写から読み取れる。

 祇園ばやしは、かんたんに「こんこんちきちん」で通っているが、じつは、二十六通りあって、それは壬生狂言のはやしに似、雅楽のはやしに似ていると言われる。

 宵山には、それらの鉾が、つらねた提灯の灯でかざられ、はやしも高まる。

 四条大橋の東に、鉾はないのだが、それども、八坂神社まで、花やぎがつづいているように思われる。

 

 祇園祭を見たことがない私としては、一度は見物してみたいものだ。

 

 

 京都で捨て子として育てられた千重子は、祭りでふた子の苗子と出会う。自分が姉妹であることに驚き、たじろぐ、おまけに大切な人には気づかれない悲しさ。

 伊豆の踊子しかり、身分違いの2人が出逢って、物語が進行する川端康成作品は、スーと心に入ってくる。完全に交わることはない2人だけれども、どこかで糸が絡まっている。心情が揺れている描写は美しい。